--千の風になって--
A Thousand Winds
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《天声人語》15年8月28日付
だれがつくったのかわからない一編の短い詩が欧米や日本で静かに広がっている。
愛する人を亡くした人が読んで涙し、また慰めを得る。そんな詩である。
英国では95年、BBCが放送して大きな反響を呼んだ。
アイルランド共和軍(IRA)のテロで亡くなった24歳の青年が
「ぼくが死んだときに開封してください」と両親に託していた封筒に、その詩が残されていた。
米国では去年の9月11日、前年の同時多発テロで亡くなった父親をしのんで
11歳の少女が朗読した。
米紙によるとすでに77年、映画監督ハワード・ホークスの葬儀で
俳優のジョン・ウェインが朗読したという。
87年、女優マリリン・モンローの25回忌にも朗読されたらしい。
http://www.asahi-net.or.jp/~cb9s-jyuk/1000kaze.html
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Do not stand at my grave and weep.
(わたしのお墓の前で 泣かないでください)
I am not there, I do not sleep.
(そこに私はいません 眠ってなんかいません)
I am a thousand winds that blow;
(千の風になってあの大きな空を吹きわたっています)
I am the diamond glints on snow.
(冬はダイヤのように きらめく雪になる)
I am the sunlight on ripened grain;
(秋には光になって、
I am the gentle autumn's rain.
畑にふりそそぐ)
When you awake in the morning hush,
(朝は鳥になって、
I am the swift uplifting rush
あなたを目覚めさせる)
Of quiet in circled flight.
(夜は星になって、
I am the soft star that shines at night.
あなたを見守る)
Do not stand at my grave and cry.
(私のお墓の前で 泣かないでください)
I am not there; I did not die.
(そこに私はいません 死んでなんかいません)
*
埃まみれになった敗残兵のように
草原も風もまた 故郷へといざなう
わたしはあなたのために生まれたのだから
千の風になって あなたの家に還える
誇りや栄光もまたここに置いて
風が風になるように
樹々があなたに木霊するように
自分が感動をつくれなくなっても
山吹色の葉となって あなたの肩に落ちる
わたしはあなたのために生まれたのだから
千の風になって あなたの家に還える
虫の音にくつろぎを 優しい知恵を
忘れかけていた思いに いま命を与え
わたしは千の風になってあなたといる
岩山が力強く いつもそこにあるように
白い雲があなたにいつも語りかけるように
わたしは千の風になってあなたといる
そして大地がわたしの名前を呼ぶとき
わたしはあなたの戦士となって立ち向かう
*
わたしのお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 眠ってなんかいません
千の風に
千の風になって
あの大きな空を
吹きわたっています
-千の風になって意訳-
A Thousand Winds:Author unknown
訳詞:新井満
(いずれも題名は無い)
(a) Mary Frye によりオリジナル・バージョンだと確認されたと言われる詩
Do not stand at my grave and weep,
I am not there, I do not sleep.
I am in a thousand winds that blow,
I am the softly falling snow.
I am the gentle showers of rain,
I am the fields of ripening grain.
I am in the morning hush,
I am in the graceful rush
Of beautiful birds in circling flight,
I am the starshine of the night.
I am in the flowers that bloom,
I am in a quiet room.
I am in the birds that sing,
I am in each lovely thing.
Do not stand at my grave and cry,
I am not there. I do not die.
(b) Margaret Schwarzkopf の両親の友達が、葉書に印刷した詩
(大幅なアレンジが加えられている)
Do not stand at my grave and weep
I am not there; I do not sleep.
I am a thousand winds that blow,
I am the diamond glints on snow,
I am the sun on ripened grain,
I am the gentle autumn rain.
When you awaken in the morning's hush
I am the swift uplifting rush
Of quiet birds in circled flight.
I am the soft stars that shine at night.
Do not stand at my grave and cry,
I am not there; I did not die.
(c) Mary Frye が死んだ時に、British Times の死亡記事(2004年9月)に載せられたバージョン
(9行目と10行目が異なる)
Do not stand at my grave and weep
I am not there; I do not sleep.
I am a thousand winds that blow,
I am the diamond glints on snow,
I am the sun on ripened grain,
I am the gentle autumn rain.
When you awaken in the morning's hush
I am the swift uplifting rush
Of quiet birds in circling flight.
I am the soft starlight at night.
Do not stand at my grave and cry,
I am not there; I did not die.
[編集]日本語訳
(b) の日本語訳の例
わたしのお墓に佇み泣かないで
わたしはそこにはいない、わたしは眠らない
わたしはふきわたる千の風
わたしは雪上のダイヤモンドのきらめき
わたしは豊穣の穀物にそそぐ陽光
わたしはおだやかな秋雨
あなたが朝の静けさの中で目覚めるとき
わたしは翔け昇る上昇気流となって
弧を描いて飛ぶ静かな鳥たちとともにいる
わたしは夜に輝くやさしい星々
わたしのお墓に佇み嘆かないで
わたしはそこにはいない、わたしは死ななかった