※ 現代の日本 ※ 

2008年 上海外国語大学に於いて講話

  現代の日本
日本の国土は37万平方キロ米で主要国と比較して小さいですが、緯度は南の30度から北の45度まであり、
国土の61%が山林であるので気候は四季を通じて変化に富み、景観も変化に富んでます。
人口は2004年の1億2626万人をピークに減少してます。「少子問題」は大きな社会問題です。
資源はセメントの原料となる石灰石やガラスの原料となる珪石以外にみるべきものはありません。
日本人は生きてゆくために原料を輸入してこれを加工し輸出することで発展して来ました。
今後もこの方向性は変りありません。貿易こそ日本の生命線です。加工技術を大切に育て、
「物を作る人」に尊敬を抱いてます。
その貿易の相手国として第二次大戦後ずっと一位の米国に変り、2007年中国からの輸入が増えて
中国がトップになりました。米国の比率が下がり、アジアの比率が増えるという趨勢は変りがないと思います。
輸入では原油や天然ガスに次いで衣類が多いのには驚きます。衣類の82%は中国からです。
輸出は多岐に亘ってますが米国向け自動車、中国向けの電子部品は大きなアイテムです。

日本人の大学進学率は男女共に53%であります。もはや大学卒はエリートとは言われません。
しかし、所謂銘柄大学(名牌大学)は限られてるので受験競争は激しいものがあります。
私の息子も娘を有名小学校に入学させるために塾へ通わせました。中国も激烈な競争と聴いてます。
最近大学生のアルバイト(打工)の時給でも銘柄大学生とそうでない大学生との間で格差があると聴いて
驚きました。「格差問題」は現代日本の社会問題です。
90年代半ばから企業が正規雇用者の採用を控えてパートと呼ばれる一時雇用者を増やして来ました。
2007年に総就業者の25%がパートという統計があります。
2000年-2003年ころには日本は景気が悪くて大学生の就職は大変困難でした。
正規雇用を望んでも実現しないのでフリーターという若年層を生み出しました。
正規雇用者とそうでない人たちの間には当然に所得格差があります。

先に挙げた「少子問題」は老齢者の年金が今後現在の水準を維持出来るかという「年金問題」を提起します。
65歳以上の老齢者人口は2007年で21.5%です。(中国は2006年で7.9%)問題だらけの日本ですが、
1945年以降大きな戦争が世界的に無く、国際情勢が自由な貿易を保証して呉れたので日本の1人当たりの
国民所得はUS$35、000と相当高い水準にあります。
若年層の意識をみてみると「現在豊かであるが、将来に不安を持つ日本青年」と
「現在はまだ発展段階にあるが将来に希望を持つ中国青年」と対比出来ます。

日本人の一年

正月
 旧暦(農暦)の正月を祝う習慣は明治維新(1867年)以来日本人に無くなり、専ら暦年の1月1日を祝います。
家族そろって仏前で祈り、「おせち料理」という正月特別の料理を食べたころに大量の賀状が郵便で配られ、
この整理をして近所の神社に今年の安泰を祈りに出かけます。京都や大阪の有名神社は人出でにぎわいます。
息子の一家も1-3日に我が家を年賀訪問します。
企業では4日の初出の日にトップの挨拶や関係先の挨拶廻りがあります。女性の一部は和服で出勤します。
15日までは「松の内」と言い、誰でも始めて会った人には「今年もよろしく」(新年好)と挨拶します。
月半ばに(今年は14日)「成人の日」があり、20歳になった人を市町村で祝う式があります。

2月
 気候では一年で最も寒く、神戸でも雪が降る日もあります。大学や高校の入学試験があります。
俗に「ニッパチ」とは「2月、8月は人々の動きが停滞して商品の売れ行きが悪い」ことを言います。

3月
 納税の義務を果たすために確定申告を3月15日までに行う義務があります。
受付は2月から行ってるので病気などで経費が掛かった年は収入の天引きで払い過ぎた税金を還付してくれます。
日本は近年老齢者控除や配偶者控除が廃止或いは控除額が少なくなり増税が続いてます。
但し消費税(付加価値税)は中国の17%に比して5%です。学校では卒業式です。
ほとんどの企業の会計年度は3月末です。「春、桜の開花」を待つ気分が次第に高まります。
日本人が桜の見物を楽しみにするのはいささか異常です。移り行く美しい四季の自然を眺めて
「ああ、人生ははかない」という無常観にひたるのです。
「年々歳々花相似 歳々年々人不同」 という唐の詩人 「劉希夷」の作品は日本人のこころにぴったりです。

4月
 入学式、入社式があります。昔は労働組合と経営者の間でこの頃に賃金を定める話し合いを
「春季闘争」と呼んでましたが、今は年収を一括して話が決められて「争議」になることは稀です。
私見ですがやはり所得水準が向上したからでしょう。企業では3月―4月は人事異動の多い時期でもあります。
子弟の教育問題も関連してるでしょう。桜は2週間も経たずに散るので「もののあはれ」が好きな
日本人にとって郷愁の花と言えます。

5月
 4月29日の昭和天皇の誕生日が1989年の崩御以降変遷がありましたが「昭和の日」となり、
憲法(実施)記念日5月3日、4日「緑の日」5日「子供の日」と続く「黄金周」です。
ゴールデンウイークと称します。5日は中国文化の「端午の節句」で鯉のぼりの旗があちこちで見られます。
現行憲法は敗戦後1947年5月に実施されたものですが、「戦争放棄」など国民生活の基本となってます。

6月
 日本人の主食「米」の田植えシーズンです。北海道以外の地域でよく雨が降る「梅雨」のシーズンで
7月中旬まで続きます。年2回の賞与(奨金)の時期です。
サラリーマンにとっては年収の約2割をもらえるのでローンの返済や大型家電、家具や車の購入に充てます。

7月
 12月の歳暮と共に7月にも中元と称して世話になってる人に物品を贈答する習慣がありますが、
だんだん廃れてきてます。学生は夏休みで良い時期です。気候は蒸し暑く9月中旬までは大変なシーズンです。

8月
 丁度広島(6日)、長崎(9日)に原子爆弾が落とされた記念日で平和集会があるのと15日が終戦記念日
であること。仏教の盂蘭盆が15日であることから日本全体が宗教的な雰囲気になります。
戦争を知らない世代が人口の半分以上を占めるのですが、「盆」の気分は皆が共有してるのでしょう
企業は15日を中心に前後数日を休暇とするところが多いです。
TVでは高校野球(野球は日本でポピュラーな運動)が2週間ほど連続して試合を放映するので
地元の高校の戦績が各地で話題になります。

9月
 台風(熱帯性低気圧)は6月ころから日本に到来するのですが、秋の台風は勢力が強いです。
水稲に雨をもたらします。発生順に「台風 号」と命名されます。
雨と風による被害が主として西日本で起こります。
春の彼岸(3月20日ころ)と共に秋の彼岸(9月21日ころ)前後3日は墓参りのシーズンでもあります。
下旬になると秋の気配を感じるようになります。

10月
 気候が良い時期なので学校では運動会が催されます。
1964年の東京オリンピックの開会式も10月10日でした。
主食の米の収穫期なので各地で「秋祭り」が開催されます。
専業農家の人口はわずかに4%ですが祭りの伝統は承継されています。

11月
 3日は(憲法発布の記念日)「文化の日」です。音楽、演劇、美術の催し物が盛んとなります。
果物や野菜の豊富な月でもあります。日本は山林が多いので紅葉すると美しい景色になります。
春の桜、秋の紅葉見物は日本人の素朴な楽しみです。

12月
 年内に仕事を終了すべく企業では忙しいシーズンです。忘年会が企業内部や親しい仲間間で行われます。
年賀状を書くのに多大の時間を要します。近親者をその年に亡くした人は服喪中の挨拶状を送ります。
クリスマスは西洋的な雰囲気で楽しまれています。
洗礼を受けたキリスト教徒は国民の2%にも満たない数です。学校は2学期が終了します。
31日大晦日には深夜全国の寺で「除夜の鐘」が打ち鳴らされます。
数は108回、仏教でいう人間の煩悩の数です。
ベートーベンの第9交響曲(合唱付き)が各地で演奏されます。

中国、特に上海と日本の生活様式(ライフスタイル)はあまり変らないと思います。
自転車や車で市場やスーパーに買い物に行く。
家庭には冷蔵庫や電子レンジ、エアコンなど似たような家庭電器がある。夜はTVをみてベッドで寝る。
違いは日本では木造住宅が多いことです。自宅に入るに先ず靴を脱ぎます。
畳の部屋がいくつかあり、風呂は浴槽につかるという点でしょう。
浴槽は中国のホテルにあるものより深いです。首までつかって温泉のように楽しむのが日本式です。
清潔好きの日本人は布切れも厠掃除用、廊下掃除用、テーブル用、食器用と4種類も区別して使ってます。
百聞不如一見、ぜひ早い機会に皆さんの生の目で「日本」を見て下さい。
2008年9月 上海外国語大学に於いて講話「現代の日本」

 YOU YOU PAGE